一番と言っても過言ではない印象的な回です。
月子っていう女の子だったり、周りにいる人たちであったり情が溢れるような感じです。
以下ネタバレありの感想です。
<作品紹介>
制作年 2000年
原作 手塚治虫
監督 出崎統
ジャンル アニメ・医療
キャスト
月子(CV:折笠富美子)・・・ヒロイン、今回のメイン患者
フォックス(藤本護)・・・三ヶ月島で救済活動をするおじいちゃん医師
タクシー運転手(堀内賢雄)・・・お調子者
満月館(内田直哉)・・・月子に優しい旅館のおっちゃん
あらすじ
かつて豊かな漁場であった三ヶ月島の湾では、環境汚染によって公害病である三ヶ月病が蔓延していた。三ヶ月島の人たちは元の環境に戻してほしいと訴えるが、時間を要する問題である。そして、同島に住む月子という少女もまた三ヶ月病を患っていた。
<感想>
「月子の物語」儚さと切なさ
月子の儚さや切なさを持った物語だと、そう強く感じます。
月子は公害病である三ヶ月病を患っています。BJと出会い、脚を診てもらい介抱され恋慕のような淡い気持ちを持ちます。そして再び会った月子は、BJを思う気持ちが大きくなりますが、脚がより悪くなり手術することに。脚は良くなりましたが、完治しないまま、海に潜ってしまいます。
序盤のBJに介抱してもらった月子の表情は可愛いらしいもので、純粋な気持ちが出てきた初々しいものも感じます。ただ、他の三ヶ月病患者が亡くなったり、海で採った魚を売りに行くが誰も買ってくれない姿を見ると胸が痛くなり、悲しさや寂しさ儚い思いが渦巻き、そして悪い予感がします。
その中でも救いとも言うべきものが、BJが様子を見てくれたり一緒に魚を売りに行ってくれる描写は気持ちが助かる部分でした。特に月子のリハビリのシーンは胸が熱くなります。「さあ立ってみろ、自分で足で立つんだ、歩け!自分の足で歩くんだ」こんなに声を上げて応援するBJに、月子が応えようと頑張る姿は観ているこちらも応援したくなるそんなシーンです。
そのBJに月子は恋の気持ちが大きくなり、人魚伝説の通りに話が進んでいきます。恋が実るために”青真珠”を取りに行ってしまい、本当に心を抉られる切なさが湧き、終わりを迎えます。月子は一生懸命魚を採って生活をして、恋をしただけなのに、、、。
BJの月子を助けようとする姿
今までのBJよりも患者を助ける勢いみたいなものを強く感じた回でした。今回のメインの患者である月子は、公害病の被害者でありながら助けを求める手段がないことが大きいのではないでしょうか。治療費や慰謝料をまともに受け取れない状態、後述しますが住まいがわからないことが要因で現状に陥っていますね。BJとしては助けを求めるのは人としての権利であるかのようにと言っている気がします。
涙のラストシーン
BJが月子の体から摘出した”青真珠”を手に取り三ヶ月病を治す鍵になると立ち去り、涙を浮かべるところです。やはり月子が去ってしまったことや悪しき公害病に思うことがあると察する描写です。悲しいとともに月子のような被害者を出さないと決意を固めた、そんなものを感じ取ります。BJには珍しいラストシーンでした。
毎話で患者がBJの手によって助かると期待してしまう分、助けられなかった時の気持ちの落差があり、そして辛さが増えてしまう。そんな感情の浮き沈みの構造が、今作や「カルテ3 マリア達の勲章」と同じ現象が起きたと感じます。
月子とは?
劇中では地元の人たちに人魚の生まれ変わりなんて呼ばれていたりしています。ただ、前々回の「カルテ8 緑の想い」のようにファンタジー感ではないように思います。今回はより現実的な推測をしてしまいます。月子の出自に関しては、親はいたはずです。その後、親が亡くなってしまったか、捨てられてしまったと。月子の表情から察するに。BJが月子の素性を調べるために養護施設に行くと言っており、ここからでは前述の二択は絞ることが出来ないですが、幼いころからひとりになってしまったかもしれません。泳ぎが上手に関してはずっと海に潜って魚を採る習慣があったのでしょう。いずれにしても人魚伝説の”恋”の話が月子の支えになっていたことを願うばかりです。
さいごに
「カルテ10 しずむ女」は涙腺を震わすお話でした。泣きアニメと言っても過言ではないですね。key作品並みの泣き作品かと個人的に思いますが、こっちの方が救いがない分より悲しくなります。海に向かって叫ぶBJのシーンでは筆者の心も「月子!!!」状態でした。
おそらくもう今作以上のOVAブラックジャックはないと思います。でないと涙腺が持ちません。
以上
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